一般的な光学式エンコーダでは、高温・振動・放射線などの過酷な環境下での使用に制限があり、長期的な信頼性に不安も残ります。
一方で変調波レゾルバは、電磁誘導現象を利用した角度センサで、光学式エンコーダと比べて環境耐性に優れ、例えば耐温度環境では-50℃から+220℃という広い温度範囲にも対応可能です。
本記事では、変調波レゾルバの基本的な仕組みから用途例まで解説します。過酷な環境下での角度検出にご検討お願いします。
エクストコムでは、専門エンジニアがお客様の具体的な用途や要件に基づいて、最適な変調波リゾルバをご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

変調波レゾルバとは

変調波レゾルバは電磁誘導現象で角度と位置を非接触で検出するアブソリュートセンサ(絶対位置検出センサ)です。振幅変調した高周波で励磁し、変調波の低周波成分で位置を検出します。
励磁の高周波化で、検出感度が高くなりコイル巻数が大幅に減少し、コイルのプリントパターン化が可能となり小型、薄型化を実現しました。高周波化にもかかわらず変調波の低周波成分で位置を検出する事で角度検出も容易です。
変調波とは
変調波とは、一定の周波数を持つ高周波を振幅変調した搬送波のことです。その特性によって過酷な環境下でも長期にわたって回転機器の回転角を検出できます。
レゾルバとは
レゾルバとは、回転機器の回転位置を検出する角度センサのことです。
検出した回転位置をアナログ信号として出力する仕組みです。電磁誘導を利用したトランスと同じ原理を応用しており、励磁コイルと検出コイルの間に生じる磁界変化を利用して回転角度を検出します。
レゾルバとエンコーダの違い
レゾルバとエンコーダは、どちらも回転機器の回転角を検出して電気信号を出力する角度センサですが、基本的な違いは回転角の検出方法です。
レゾルバは電磁誘導で回転角を検出しますが、エンコーダは円盤に形成されたスリットパターンで回転角を検出します。
また、精度の面でも違いがあり、光学式エンコーダはレゾルバと比較してより高精度な検出が可能です。ただし、レゾルバは環境耐性に優れており、振動や衝撃、極端な温度変化にも強いという特徴を持っています。
レゾルバとホールセンサの違い
レゾルバとホールセンサは、どちらも回転角度を検出するセンサですが、原理と特性は大きく異なります。
ホールセンサは磁界の変化を利用して角度を検出するため、悪環境でも角度検出が可能です。しかし、温度ドリフト量が大きく、周囲温度の変動する環境では精度が低下するという欠点もあります。
一方、レゾルバは変圧器(トランス)の原理を利用し、アナログ交流電流で励磁され、回転位置情報を出力します。このため、過酷な環境下でも角度検出が可能です。
変調波レゾルバの特徴
変調波レゾルバは、振幅変調された高周波で励磁する方式を採用したことにより、従来のレゾルバにない特徴を持っています。主な特徴は以下のとおりです。
- 超薄型設計が可能(センサ部厚さ2.5mm以下)
- 超小型化を実現(センサ部直径φ6mm以下)
- 高分解能化が容易(最大400万分割以上)
- 過酷な環境下での使用が可能(高温・真空・放射線対応)
- 多様な形状設計が可能(リニア・円筒・揺動センサ)
共通する特徴は、「高周波励磁によるコイル巻数の削減」です。従来型のレゾルバでは実現が困難だった薄型化や小型化が、コイルのプリントパターン化によって可能となりました。
この技術革新により、産業機器から宇宙機器まで、幅広い用途での採用が進んでいます。特に宇宙分野では、JAXAとの共同研究を通じて高い環境耐性が実証できており、信頼性の高いセンサとして評価をいただいております。
変調波レゾルバの役割
変調波レゾルバの主な役割は、過酷な環境下でも角度・位置検出が可能なことです。高周波励磁方式により、従来型のレゾルバと比べて検出感度が向上し、より簡易な検出が可能になりました。
また、変調波レゾルバはアブソリュート方式のため、電源投入時から即座に正確な位置情報を得られます。
変調波レゾルバの用途・使用例
変調波レゾルバは、角度検出が必要とされるさまざまな産業分野で活用が可能です。主な用途として以下が挙げられます。
- サーボモータ
- 産業用ロボット
- 工作機械
- 精密計測機器
- 自動搬送システム
- 船舶の舵角制御
- 航空機
- 宇宙機器
- アミューズメント機器
いずれにも共通するのは、過酷な環境下での角度検出と信頼性の高い動作が求められる点です。特に、高温・低温・振動・衝撃などの厳しい条件下でも安定した性能を発揮しなければなりません。
また、長期間のメンテナンスフリー運用が期待される場面でも、変調波レゾルバは活用されています。
製作例
変調波レゾルバの製作例では、さまざまなサイズと分解能に対応した製品を開発しています。
- ロータリ
- φ6mm×厚さ6mm(センサ部)、分解能4096(8192分割可能)
- φ18mm×厚さ2mm(センサ部)、分解能8192(100万分割可能)
- φ92mm×厚さ16mm(センサ部)、分解能200万分割(400万分割以上可能)
- リニア
- 分解能 0.03μm 検出長 1mm(10mm以上可能)
- 円筒、揺動センサ製作可能
例えば、外径φ6mm以下のセンサでも、8192分割という高分解能な角度検出が可能です。大型のものでは200万分割(400万分割以上可能)という極めて高い分解能を実現しています。
また、用途に応じて円筒型や揺動センサなど、さまざまな形状のカスタマイズも可能です。
エクストコムでは、専門エンジニアがお客様の具体的な用途や要件に基づいて、最適な変調波レゾルバをご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

変調波レゾルバのメリット
以下が変調波レゾルバの主なメリットです。
- 高周波励磁により検出感度が向上
- 高周波化にもかかわらず角度検出も容易
- 軽量・小型化が実現可能
- 製造コストを低減可能
- 従来のエンコーダの代替として使用可能
- サーボモータの用途に適している
メリットに共通するのは、産業機器の小型化・高性能化という現代のニーズに完全に合致している点です。
特に、プリント基板技術を活用したことにより、従来の巻線型レゾルバと比較して小型化と製造コストの削減を実現しています。また、高周波励磁方式の採用により、高い検出感度と精度を維持しながら、省スペース化や軽量化にも対応できます。
デメリット・短所
変調波レゾルバのデメリットは、その高性能を引き出すために専用の信号処理回路やコントローラを必要とします。このため、システム全体としては複雑化する傾向にあり、初期導入時のコストが増加することもあります。
エクストコムでは超薄型、超小型、超高分解能レゾルバを共同研究
エクストコムでは、従来のレゾルバの課題を解決する変調波レゾルバを共同研究しました。高周波励磁技術を活用し、コイルのプリントパターン化に成功したことで小型化と高分解能を両立しています。
エクストコムでは直径6mmの超小型モデルから、分解能200万分割を実現する高分解のモデルまで、幅広い製品を開発しています。特に、センサー部厚さわずか2.5mmの超薄型設計は、限られたスペースでの角度検出を可能にしました。
また、JAXAと共同研究を通じて、-50℃から+220℃という過酷な温度環境下でも安定動作する高環境耐性モデルを開発。この技術は宇宙開発だけでなく、産業機器やロボットなど、さまざまな分野で活用されています。
いずれにおいても、シンプルな構造設計により、お客様の要望に応じた特注対応が容易です。用途や環境に最適化された変調波レゾルバを、ご要望に応じて設計・製作いたします。
お客様の角度検出の課題を、エクストコムの変調波レゾルバで解決します。まずはお気軽にご相談ください。

まとめ
変調波レゾルバは、過酷な環境下でも安定した角度検出を実現するセンサです。高周波励磁方式の採用により、従来型レゾルバの限界を超える小型化と高分解能化を実現し、産業機器から宇宙機器まで幅広い分野で活用されています。
変調波レゾルバは技術の進歩により、デジタル信号処理の課題も徐々に解決されつつあり、今後さらなる発展が期待される技術分野です。
エクストコムでは、専門エンジニアがお客様の具体的な用途や要件に基づいて、最適な変調波レゾルバをご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。